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おすすめ作品 Secret rose garden 一筋の光 第17話

一筋の光 ~Secret rose garden

「カナダ、あっ……」

セナが確認できた国がカナダだと聞いた瞬間、エマの頭の中に蘇る記憶。

――もしカナダにも来ることがあれば、俺にも少しは協力できるから
一年ほど前に出会った勇輝との記憶が、鮮明に蘇る。

そのときにもらった名刺がどこかにあったはずだと、エマは慌てて財布を取り出した。どうかしたのかと問いかけるセナには少し待つようにだけ告げて、エマは財布の中身をひっくり返す勢いで探していく。

「……あった!」

引っ張り出したのは、あのときに勇輝から受け取っていた名刺。財布のカードポケットの中にしっかりと収まっていた名刺を取り出して、書いてある内容を確認する。

「カナダ、モントリオール――」

書いてあった勇輝が住んでいる住所を読み上げれば、無言で見守っていたセナがお茶を飲みながら目を丸くした。

「え? あんた、カナダに知り合いいるの?」
「一年くらい前に、旅の途中で泊まっていたユースホステルで出会った日本人が、カナダ在住の人だったんですよ」

驚くセナに、エマはかいつまんで勇輝のことを説明した。

彼が真剣に作家を目指していることや、同じように目標に向かって頑張っていることなどを知って話をしたのだと伝えると、勇輝のことを知らずに不安そうだったセナの瞳が幾分か安心したように細められた。

「カナダに来ることがあれば、案内するって言ってくれてて……」
「なかなかないよ、そんな出会い。エマにはもしかしたら、いろんな人と良い縁がつながる何かがあるのかもしれないね」

たとえ旅をしていたとしても、騙されることはあれど、いい人と出会える確率は限りなく低いとセナは言う。エマもそれは理解していて、大きく頷いた。

「はい。だからその縁は、大事にしないといけないですよね」
「よく言った! んじゃ、家に帰ったら連絡してみよっか」

膨れていたお腹も、話をしている過程でだいぶん落ち着いたと言って、セナが立ち上がる。エマも続くように腰を上げて、襖を開けて部屋を出た。

会計をするセナの後ろから店員に「ごちそうさま」と声をかけて、一足先に店を出る。青々とした空が、再び始まる旅を暖かく祝福してくれている気がして、エマは大きく空に向かって伸びをした。

「行こっか」
「はい。あ、ごちそうさまでした、セナさん」
「いいってことよ」

相変わらずかっこいい返事をしてくるセナに続いて車に乗り込むと、車はセナの家に向かって発進した。

「セナさん、パソコン借りてもいいですか?」
「もちろん。あ、無料のアドレス取れるから、自分用に作っちゃえば?」

エマとしては、セナに自分宛のメールを見られたところで何の問題もない。だが相手からしたら、エマに送っているのにエマではない人に見られるのは嫌だと思う。というセナの説明に納得したエマは、自分専用のメールアドレスを作ることを決めた。

インターネットに接続しているパソコンやスマートフォンがあればどこでも確認できるので、旅先の利用に便利だとセナに言われたのも、作ることを決めた理由だ。

「よし、っと」

両手の人差し指だけを使って、おぼつかない手つきでキーボードを押していたエマは、画面に向けていた顔をゆっくりと上げる。無料のメールアドレスの作成が、ようやく終わったのだ。

本当はセナにメールアドレスの取得を頼んだのだが、一人で操作をするときのために今から慣れた方がいいと断られていた。

「できた?」
「はい。パスワードを覚えておけるか心配ですけど……」
「いざとなったら初期化できるから大丈夫だよ」

カラカラと笑うセナを不満そうに睨みつけながら、今度はメール作成画面を開く。アドレスを入力する欄をクリックして、そこに名刺に書かれた勇輝のメールアドレスを確認しながら打ち込んでいく。
慎重に入力したこともあり、アドレスを作成するよりもはるかに時間がかかってしまった。

「これでよし」

英数字が入力された画面と名刺を見比べて、間違いないことを確認する。やっとここから、本文を入力することができるのだ。

『勇輝さんへ――お久しぶりです。一年ほど前、フランスのユースホステルでお互いの目標や夢についてお話をしたのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか? 私はちょうど先日、フランスでおばあちゃんのお墓探しを終えたところです。結果から言うと、フランスでは見つけることができませんでした。けれど、今お世話になっている方から、カナダでもフランス語を話す地域があることを聞きました。どの地域かご存知であれば、教えていただけたら嬉しいです。エマ』

目に見える手紙やメールだと、文章を確認できる分とても不安で、エマは何度も書いた文字が変ではないか見直しをする。そしてメールを書くのと同じくらいの時間をかけて見直しを終えたエマは、震える手で送信ボタンを押した。

送信済みフォルダへとメールが移動したのを確認すると、フッと詰めていた息を吐き出す。

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