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おすすめ作品 Secret rose garden 一筋の光 第14話

一筋の光 ~Secret rose garden

「おはよー」
「おはようございます」

話は弾み、途中エマは初めてのお酒も経験した。ほろ酔いで語り明かし、少しだけ寝不足気味でキッチンへと顔を出す。対するセナはいつもと全く変わらない状態で、朝ごはんを用意しエマに声をかけてきた。

「お、二日酔い?」
「そこまで飲んでませんよ、ただの寝不足です。……セナさんはなんでそんなに元気なんですか」
「若さだよね」
「…………」

真顔で言われた内容にあえてエマは無言で返すと、いつもの席に座った。目の前に置かれているのは、作りたてのスクランブルエッグとカリカリに焼けたベーコン。そして、ミニトマトとレタスのサラダだ。

「ひっさしぶりに有給使ったら日数結構あってさ」
「あ、パン美味しいですね」
「エマ、話聞いてる?」

カゴに入れられたパンを食べながら、セナの話に耳を傾ける。今回セナがわざわざ有給を取ってくれたのは、取り忘れて溜まっていた有給をいい加減使えと怒られたからだと彼女は笑う。

「何日休めるんです?」
「一ヶ月ちょっと!」

このままだと二十日分の有給が消える予定だったんだと続けたセナに、エマは口をあんぐりと開けた。実際エマは、会社員として働いたことはない。有給という言葉もなんとなく知っている程度だが、そんなに連続で休みが取れることがあるのかと驚いたのだ。

「働きすぎちゃダメですよ」
「仕事、好きだからさ」
「それならまあ、仕方ないですね」

好きだから、楽しいから頑張れる。いつか勇輝と話したときも聞いたような言葉を思い出したエマは、小さく微笑んだ。

「さて、それじゃあ出かけよっか」
「……どこにです?」

朝食を綺麗に平らげて、食後のコーヒーを飲んでいたセナがおもむろに立ち上がった。食器を洗っていたエマは、その勢いに驚いて先ほどと同じようにぽかんと口を開ける。

「カイルんとこ」
「カイルさん?」

久しぶりに聞く名前に、ますますどうしてだとエマは首を傾げた。
三年前のあの日。ラジオでカミーユの情報を呼びかけてもらえるようお願いをしてから、カイルとは一度も連絡を取っていない。もちろん、お墓を見つけたあかつきにはセナを通じて直接連絡を取るつもりでいるが、実際はまだ見つかっていないのだ。

「せっかく戻ってきたんだから、私にしてくれたようにカイルにも報告してやってよ。あいつもその方が喜ぶだろうし」
「そう、ですかね」
「そりゃそうでしょ」

笑顔でセナに叩かれた背中。痛いというよりもただただむず痒くて、エマは緩んだ口を隠すように、俯き加減でセナの車に乗り込んだ。

「あ、それは持ってくんだ」
「せっかくなら、目で見た方が楽しいかなって」
「確かに。私も昨日楽しかったし」

待ち合わせ場所は、パリの中心部にあるおしゃれなカフェ。エマはセナに借りた手提げのカバンに、財布と、スケッチブック数冊を入れて車に乗り込んでいた。スケッチブックの中身は、昨日セナにも見せている。描いてあるものを思い出したセナは、楽しそうに口を開いた。

「カイルもきっと喜ぶよ」

さっきも聞いたセリフをもう一度ゆっくりと呟いたセナは、車のエンジンをつけるとアクセルを踏み込んだ。緩やかに動き出した車は車道に出て、街中に入るにつれて多くなってきた車に混ざり進むこと数十分。待ち合わせをしていたカフェの駐車場に、セナは車を滑り込ませた。

「ここだね。もう到着してるらしいから、入ろうか」
「はい!」

車を降りてスマートフォンを開いたセナは、カイルから来ていたメッセージを確認する。簡単に座席の場所が書かれているその内容を読んだセナは、エマとともに店内へと足を進めた。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「連れが先に入っているので大丈夫です」
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」

声をかけてきたウェイトレスに断りを入れてから、店内を進んでいくセナの後ろにエマも続く。

「あ、こっちこっち」

少し歩いたところで、窓際一番奥の席から手が上がり、とても通る男性の声がエマたちの耳に届いた。視線を上げればそこにはカイルがいて、楽しそうにニコニコと笑顔で上げた手を左右に振っている。

「お待たせ」
「お久しぶりです、カイルさん」
「やあエマ、久しぶりだね」

ぺこりとエマがお辞儀をすれば、透き通った青い瞳が嬉しそうに細められた。セナは二人のやりとりに入ることなく、どのコーヒーを頼もうかとメニューを見て唸り声を上げている。

「ほら、君も座って」
「はい、ありがとうございます」
「メニューこれね」

わざわざ隣の椅子を引いてくれたカイルにお礼を言って腰を下ろす。セナからメニューを受け取ったエマも飲み物を選ぶと、話しを始める前に注文をした。

「コーヒーをミルクたっぷりで一つと――」
「紅茶でお願いします」

朝もコーヒーだったからとエマは紅茶を頼んだ。カイルはすでに飲み物が手元にあるため、そわそわと二人の注文が終わるのを待っている。

「で、旅はどうだった?」
「ふふ、セナさんと同じ質問ですね」

身を乗り出して聞いてきたカイルと、コーヒーを飲みながら穏やかに質問したセナ。その様は正反対だが、言葉は全く一緒で、エマは楽しそうに口に手を当てて笑った。セナとカイルは一瞬見つめあったあと照れ臭そうに笑い合って、そしてまた、エマの近況を教えて欲しいとカイルが口にする。

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