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ニューオリンズと共に 3(仮)長編現代小説[40代お酒好きママの挑戦]

ニューオリンズと共に3(仮)長編現代小説40代お酒好きママの挑戦]

日本に移り住んでからもう直ぐ一年。

日本の暮らしにもようやく慣れ、セナの気持ちに少しの余裕が生まれた。肩の力が抜けてきたこともあってか、最近夜眠りにつくと、ニューオリンズに住んでいたときのライブの興奮や感動を夢に見る。

夢で見た昔の記憶は朝起きてからも頭から抜け落ちることはなく、セナは舞台に立って、また歌いたいと思うようになった。

あの頃の感動を再び味わいたいと、胸にこみ上げる熱い想い。溢れる気持ちを抑えられなくなったセナは、飛び込みであらゆるライブハウスをめぐり、歌わせてもらえるように頼み込んだ。しかし、ニューオリンズに比べると圧倒的に東京のライブハウスは少なく、ジャズ音楽の需要もほとんどない。

何十件ものライブハウスに頼み込んだが、手応えは得られなかった。

疲れ果てたセナだったが、それでも諦めきれずに他のライブハウスを探し歩いていると、風に乗ってどこからか聞こえてくる大勢の歌声。讃美歌のようにも聞こえるが、手を叩いたりステップを踏んだりしながら歌っている雰囲気を感じた。「賛美歌」と比べると、より生活に根ざした歌詞が多く、聖書をベースにした前向きなメッセージを取り入れているのもゴスペルの特徴だ。

歌声に誘われ、導かれるように足を運んだ先には、この辺りでは珍しい大きな教会があった。

白い壁に灰色の屋根。屋根の上には、教会のシンボルである十字架がかけられており、正面にある入り口の両側には、光をキラキラと反射させる美しいステンドグラスがはめ込まれた、特徴的な大きな窓。

セナは教会の入り口に近づくと、歌の邪魔にならぬよう静かに扉を開けた。

扉を開けた先にある木でできた長椅子を、ステンドグラスを通り抜けた暖かな色が飾る。

そしてさらに向こうには、体を揺らしゴスペルを歌う二十人近い男女の姿。楽しそうに歌う彼らにつられるように、前の方の長椅子に腰掛けている観客たちも、体を揺らし、ときには一緒に口ずさみながら手を叩いている。

この光景を見た瞬間、セナの心の中に、夢に見たあの感動がこみ上げてきた。だが歌の邪魔をしてはいけないと、歌っている人たちや観客から距離のある、一番後ろの長椅子の端に腰掛ける。

一曲一曲が心に響いてきて、セナは最後まで椅子に座ったまま耳を傾けていた。

最後の曲が終わったあと、素晴らしかったと思いを込めて拍手を送る。気づけば、セナの頬には暖かい涙が流れていた。

ハリケーンに全てを奪われ、両親や祖父母のためにも涙は流さないと決めて走り続けた一年間。心に張り詰めていた糸が、優しく力強いゴスペルの歌を聞いて、プツリと切れた。

ゴスペルを歌っている中に、恰幅が良く30代半ばの小麦色に肌を焼いた、スパイラルパーマが特徴の女性がいた。彼女の名前は東聖子。『Oh happy day』の曲が始まると、彼女は客席の間にある通路を歩きながら、太くしなやかな声でソロパートを歌い上げる。

そのとき、客席にも視線を向けていた聖子は、涙を流しながら歌を聴いているセナの存在に気が付いた。だが、今歌を止セナわけにはいかない。聖子はセナの存在を気にしつつも、残り数曲全てを見事に歌いきった。

感動に包まれる教会内。聖子は拍手を送ってくれる観客に笑みを返してから、未だ涙を浮かべるセナの元へと足を進めた。手には、ハンカチが握られている。

「大丈夫?」

「……大丈夫です。ありがとうございます、とても感動してしまって」

椅子の前にしゃがみ込み、聖子がハンカチを差し出した。驚いたのかセナは少しだけ目を見開いたあと、おずおずとそのハンカチを手に取る。

「そんなに感動してもらえたなら、私も嬉しいわ! 私は聖子、あなたの名前は?」

セナの答えに花が咲いたような笑顔を浮かべた聖子は、セナに断ってから空いている隣の席に腰掛けた。

「セナと言います」

「ゴスペルは初めて? たくさんの人と一緒に歌うのはとても楽しいわよ」

手を合わせ、聖子はセナの顔を覗き込む。暖かい笑みを浮かべたその笑顔に、セナは同意するように首を縦に動かした。

「セナは何か音楽をやっているの?」

「1年前まではジャズを歌っていました。訳があって、日本に来てからは音楽に携われてなくて」

海外に住んでいたことを簡単に説明したセナは、聖子に視線を合わせて苦笑する。

「そうなの……そうだわ、セナ! よかったらここで一緒に歌わない? ジャズとは違うけれど、それでも歌うって楽しいことよ」

セナの苦笑から何かを感じた聖子は、深く聞くことはせずにワントーン高い声を出すと、椅子から立ち上がる。そして、ステージの上から様子を伺っていたゴスペルのメンバーに向かって手を振った。

「メンバーが一人増えても問題ないでしょう?」

「もちろん!」

「一緒に歌おう!」

彼らにセナたちの会話は聞こえていなかったが、彼らも深く探ることなどはせずに、みんなが笑顔で声を出した。

「……いいんですか? ありがとう、ございます」

セナは椅子から立ち上がると、横に立っている聖子に、そして暖かく迎えてくれた舞台上の新しい仲間に深々と頭を下げる。

暖かい笑みをくれる聖子たちの気持ちを受け取ったセナは、このゴスペルに所属し、彼らとともに歌うことを決めた。これからは毎週、この場所で歌うことができるのだ。

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