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おすすめ作品 Secret rose garden 繋がる 第35話

エマがルイの家にきてから、何人もがこの家に訪れるようになっていた。

「素敵な家ね」

「ん。バラのいい香りがする」

セナも、幸代とともにエマに会いにこの場所にきていた。客人を喜ぶように咲く美しいバラたちに、二人はしばし見とれたあと、エマの住む家のドアを叩く。すでに連絡を受けていたエマは、嬉しそうに、しかし少しだけ緊張したような声でドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

「久しぶりね、エマ」

「久しぶりー」

エマとの再会に顔を綻ばせる幸代を見て、セナも挨拶をしながら気づかれないようにホッと息を吐き出した。三年ぶりに会う二人が、どちらもあの頃と同じように笑顔を見せてくれて安心したのだ。

リビングへと通されたセナと幸代は、エマにコーヒーを入れてもらう間、ソファに座りながらいつかと逆だなと笑い合う。エマ本人は、真剣にコーヒーを入れているので気づいていないようだ。

「お待たせしました」

「ありがと」

「うんうん。ミルクたっぷりだね」

お店に出ているときよりも薄い、淡い赤色の唇で微笑んだ幸代の隣で、セナは満足そうにコーヒーを一口飲み込んだ。甘さもちょうど良かったようで、セナはエマに向けてグッと親指を立ててウィンクしていた。

そこからは、のんびりと今までのことを語り合った。エマの旅の話はもちろん、セナの仕事の話や、幸代の仕事の話まで幅広く。幸代が店に飾っているエマの絵が、店の客から好評なことなど、本当にたくさんの話をした。

「……幸代さんはどうして、あのとき私を助けてくれたんですか?」

その中で、エマは今までずっと気になっていた疑問を、幸代へと投げかけた。自分を助けてくれる理由、それは、いつかセナに問いかけたものと同じようで、少し違う。なぜなら、エマは今二人に対して不安を抱いてはいないからだ。

ただ純粋に、幸代がどうして助けてくれたのか知りたかった。

「そうね……」

コーヒーの入ったコップを両手で包み込んだ幸代は、エマの方を見つめて薄く微笑む。数秒思案したあと、唇を小さく開いた。

「……あなたが、私の子供のようだったから、かしらね」

「そう、だったんですね」

「ええ」

幸代と出会ったとき、エマは十八歳。そして幸代は、四十代半ばほどだった。幸代が若い頃に子供を身ごもっていれば、年齢は確かにエマと同じぐらいだろう。そう思ったエマは、納得したように首を縦に動かす。

その子供が今どうしているのかとか、どこが似ているのかとか、深く聞くようなことはエマはしなかった。聞いたあと、どう答えればいいかわからなかったからかもしれない。

「私も少し、幸代さんのことお母さんみたいだって思ってたんです」

だからエマは、いつか思っていたことを素直に幸代に伝えた。嬉しそうに笑った幸代の顔を見て、その選択が間違ってなかったことを知ると同時に、暖かくなる胸。ルイと家族の話をし、塞がった胸の穴。そのおかげか、エマの心は以前よりずっとたくさんの暖かい気持ちを感じられるようになっていた。

「あ、じゃあ私は?」

「……言っていいんですか」

「え、いいよ?」

今まで黙っていたセナが、空っぽになったコーヒーのカップをテーブルに置いて手を挙げた。素直に言っていいのかわからなかったエマが不安そうに声を出せば、セナの隣で口元に手を当てて笑う幸代。

「私も聞きたいわ」

幸代はきっと、この先のエマの言葉を予想していたのだろう。

「お父さん」

「……あんたねぇ」

「ふふ」

不満そうに眉間にシワを寄せるセナとは対照的に、幸代は珍しく声を出して笑う。エマも楽しくなって声を出して笑えば、セナは仕方ないなと眉毛を下げて、結局最後は同じように目を細め、楽しそうに笑うのだった。

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