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おすすめ作品 Secret rose garden 繋がる 第33話

時刻は夕方。まだ誰も人のいない薄暗い店内で、幸代は黒いソファに背を預けて座っていた。そして思い出したようにテーブルに置いてあった封筒に手を伸ばすと、ペーパーナイフで丁寧にそれを開けていく。まっすぐに切り取られた部分から中身を取り出して、細く美しい指で折られていた手紙を開いた。

『幸代さんへ……本当に、お久しぶりです。出会ったあの日から、三年以上経ってしまいましたね。ずっと連絡ができず、ごめんなさい。今ようやく、私はおばあちゃんのお墓を見つけることができました。そしてやっと……、幸代さんに報告の手紙を書くことができました。あの日幸代さんに出会わなければ、今ここにいる私はいなかったと思います。ありがとう以上の感謝の言葉が見つからないです。お礼としてはささやかですが、幸代さんを想って描いた絵を送らせていただきたいと思います。本当に、ありがとうございました。エマ』

手紙を閉じた幸代は、残りの二枚に手を伸ばした。写真だった一枚はそのままテーブルの上に残し、もう一枚をペラリとめくる。

「……本当に、いい絵を描くわね」

赤く彩られた唇から、深く長い息が吐き出された。
幸代に送られた絵は、十三本の紫色のバラの花。華麗に彩られたそのバラは、ハガキほどの大きさの紙に描かれているにも関わらず、紙に収まり切らないオーラを醸し出していた。

幸代はその日のうちに小さな額縁を注文し、三日後には、金縁で囲まれた紫色のバラの絵を、自身のお店の壁に飾ったのだった。

仕事から帰ってきたセナは、家のポストに入っていた手紙たちを手に取ると、家の中へと入った。テーブルに手紙の束を放置して、コーヒーを入れてから椅子に座る。そこでようやく、どんな手紙がきてるのか確認を始めた。

「エマからじゃん!」

驚きと、嬉しさがないまぜになったような声を出したセナは、早速エマからの手紙を開けた。
『セナさんへ……お久しぶりです。いつも電話だったので、手紙だとなんだか不思議な感じですね。今回手紙を書いた理由、それは、無事にお墓を見つけることができたからです。手紙を頼りに勇輝さんの元へ行き、そこで新たな手がかりを経て、今私はケベック・シティ旧市街に辿り着きました。ここでようやく、おばあちゃんのお墓を見つけることができたんです。もちろん、幸代さんにもお手紙を描かせていただきました。詳しいことは、また落ち着いたら電話で話しますね。今までのお礼に、ささやかですがセナさんを想って絵を描かせていただいたので、送らせていただきます。追伸、雑誌用じゃないので、セナさんが持っててくださいね? エマ』

「私を想ってとか書いてあるのに、載せるわけないでしょうが」

手紙を読み終えたセナは、追伸部分に突っ込みながら、残りの二枚を引っ張り出した。
セナに送られたのは、紫色のバラが十三本描かれたもの。じっくりとそれを見つめたセナは、アクリルの写真立てを引っ張り出してくると、サンプル用に入っていた中の紙を抜いてエマの絵を挟んだ。

「ん、いいね」

満足そうに呟いたセナは、自分のスマートフォンを取り出すと絵の写真を撮って、幸代へとメールしたのだった。

「あ、いたいた」

ラジオ局にきていたセナは、目的の人物を見つけて声を出した。

「セナ?」
「今ちょうど終わりでしょ、少しいい?」
「もちろんいいよ」

自分の担当するラジオが終わったばかりだったカイルは、セナに嫌な顔をすることもなく頷く。
現在の時刻は十三時。ついでに昼食でもと誘ったカイルに、今度はセナが頷いた。

「それで、何か用があったのかい?」

手っ取り早く近くのカフェに入ったカイルは、ランチを注文するとセナに向き直った。セナは持っていたカバンを漁りながら、少し待つようにとカイルに告げる。

「あったあった。これ、エマから」
「え?」

差し出されたのはエマからの手紙。カイルにも協力をしてもらっていたエマだったが、彼の住所を知らなかった。そのため、セナに渡してもらうように頼んでいたのだ。
送られてきていた手紙の中にもう一通エマからの手紙があって、驚いたとセナは小さく笑う。

「開けてもいいかい?」
「もちろん。あんたに届いたやつも見たいし」

セナの言葉に少しの疑問を抱きつつ、カイルは自分宛に届いた手紙をそっと開いた。

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