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おすすめ作品 Secret rose garden 再開 第28話

両親が亡くなったあと、自分の手元に残っていた家族のものがカミーユの写真しかなかったこと。その写真に、美しく綺麗なバラたちに囲まれて幸せそうに笑う、祖母カミーユが写っていた。たくさんあるにも関わらず、一本一本にとてもオーラがあるバラに一目惚れして、バラの絵ばかりを描くようになったのだと伝えた。

その流れで、エマは自分がなぜこの場所に来たのかも話していた。
どうやって自分が育ってきたのか。家族はどんな人だったのか。自分自身に通じることを少しでも知りたくて、写真一枚を手がかりに旅をしていたのだと。

「それでここまで……本当に、頑張ったんだね。エマ」

ルイは目を細め、そっとエマの頭に触れた。いたわるように優しく撫でられた頭に、恥ずかしさよりも嬉しさの方が先にきて、エマは身をまかせる。

「僕がバラを好きになったきっかけはそんなにたいしたことはないんだけど……」

エマの頭を撫でている手とは逆の手で、ルイは恥ずかしそうに首に手を当てた。
自分がバラを好きな理由、それは、祖母が花屋を営んでいて、そこで咲いていた大輪のバラを見て一目惚れをしたからだとルイは語った。
写真に写っていた花屋「Secret Rose Garden」は、ルイの祖母が経営していたお店だったのだ。

「エマの両親のこと、おばあさんのこと。全部知ってるわけじゃないけれど、僕が知ってることでよければなんでも話すよ」

立ち上がったルイは、ズボンについた砂を落としながらエマに手を差し出した。おずおずとその手を取ったエマもゆっくりと立ち上がり、同じように体についた砂を叩いて落とす。

「教えてもらってもいい?」
「もちろん」

頷いたルイは、エマの手を引いて墓地の奥に置いてあるベンチに腰掛けた。お互いの祖母のお墓が右手にあり、目の前には、ケベック・シティ旧市街の街並みが広がっている。高台にあるお墓だからこそ見られる美しい景色を視界に収めて、ルイは穏やかな口調で話し始めた。

「エマのお母さんはカナダ人でね。ここ、ケベック・シティ旧市街に、カミーユさんと二人で暮らしていたんだ」

ルイは優しい声でエマの家族のことを語り始めた。
エマの母はカミーユと二人暮らし。カミーユとエマの母は、ルイの祖母のお店の常連でもあり、家族ぐるみで出かけたりするほど仲が良かった。ルイが幼かった頃、祖母が店番をしていていないときには、カミーユによく面倒を見てもらったのだと語る。

「あ、そうそう。エマのお父さんは日本人だけど、出会ったのはこの街なんだよ」
「そうだったんだ……」

エマの父親は建築家をしていて、仕事でケベック・シティ旧市街にやってきていた。そのときにエマの母と出会い、恋に落ちる。二人は一年の付き合いを経て結婚。やがてエマを身ごもった。
カミーユも一緒に暮らす家で、父は建築家の仕事をこなし、母はカミーユとともに家事やエマを育てる。川の流れのように、時間は過ぎて行った。

「カミーユさんとかおばさんが面倒を見られないときだったり、僕が学校から帰ってきたあととかは、エマと二人でよく一緒に遊んだんだ」

そこまで話したルイは、あたりを見渡してゆっくりと立ち上がった。見下ろしていた街並みは、オレンジ色のベールに覆われている。かなりの時間、二人はこの場所にいたようだ。

「エマ。良かったら今日は僕の家に来ないかい? 暗くなってきたし、せっかく会えたから、僕はもっと一緒に話したいんだ」
「でも、いいんでしょうか?」
「君さえよければだけど……僕は君とまだ話せるのならとても嬉しいな」

目尻を下げて優しく微笑むルイは、エマが立ち上がりやすいようにと手を差し出した。その手を取ったエマは立ち上がり、カミーユが眠るお墓に視線を向ける。

ようやくたどり着いたこの場所。すぐに去りたくない気持ちは確かにあって、また、エマ自身ルイと話したい思いが大きくて、気づけば首を縦に動かしていた。

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