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おすすめ作品 Secret rose garden 再開 第27話

「エマ……君は、カミーユおばあさんのお孫さん、ですね?」

エマ自身も、写真を見るまでは自分の祖母の名前がカミーユだとは知らなかった。だがルイは、エマの名前を聞いただけで祖母がカミーユであると言い当てた。今二人の目の前にあるのはカミーユのお墓だけれど、お墓を見て予想したようには感じなかった。

「――なんで、それを」

ルイが差し出してくれた手を取って、エマもゆっくりと立ち上がる。自分より身長が頭一つ分くらい高いルイを見上げたまま、戸惑いを乗せた言葉を落とした。その疑問に答えるように、ルイは脇に置いていたバケツに入ったバラたちを持ち上げる。

「ここにバラを置いていたのは、僕なんです。隣は、僕のおばあさんのお墓だから」

バケツに入った花を二つのお墓の間に置いて、ルイは手を合わせた。その姿を見つめていたエマの脳裏に、いつかも見たことがある景色が蘇る。
「エマ、こっちだよ。これは僕が植えたんだ」
「綺麗ね」

 たくさんのバラが咲き誇る、たくさんの色の花が咲き乱れるそんな場所で、年上の男の子と自分が会話をしている記憶。その記憶の中の男の子と、目の前のルイが、エマの脳内でぴったりと重なった。

「小さい頃、一緒に遊んだことが……?」

それでも確信は持てなくて、弱々しい声でつぶやく。

「うん」

バラのトゲを一つずつ丁寧に取っていたルイは、トゲの取り終わったバラをお墓に飾りながら、顔を上下に動かした。心なしか少し弾んだような声で、祖母同士が仲が良く、カナダにいる間はよく一緒に遊んだのだとルイは続ける。

「まさか、君も僕のことを覚えていてくれてるとは思わなかったよ」

少し砕けた話し方になったルイに、特に嫌悪感などは感じなかった。むしろ、懐かしいと思う気持ちがさらに強くなった気さえして、エマはお墓のバラを手入れしているルイの側へと近く。

「僕とエマが一緒にいたのは、確か君が三歳くらいのときまでなんだ。忘れられてると思ってたから、すごく嬉しいよ」

照れ臭そうにはにかんで、その顔を隠すように手元のバラを見つめる。そんなルイの心境に気づいていないエマは、隣にしゃがみこんでバラを一輪手に取った。

「おばあちゃんのバラも、ルイさんが?」
「うん。カミーユさんには、ずっと良くしてもらってたから」

お墓に添えるバラなので、一緒になってトゲの部分を取っていく。バラ農園で働いていたエマは、このくらいの処理ならお手の物だ。

「上手だね」
「日本にいたときは、バラ農園で働いていたから」

ルイの言葉がくすぐったくて、エマが小さくはにかんだ。もちろんその間も二人の手は止まることなく、先ほどまで供えてあったバラたちが回収されて、新しい元気なものへと取り替えられていく。

「ルイさんは、なぜ二人のお墓にバラを?」
「呼び捨てでいいよ。理由は……そうだね。僕が、そして二人がバラを好きだったからかな」

二つ並んだ墓石の周りは、生き生きとしたバラの花に再び囲まれた。ルイとエマはその様を満足そうに眺めてから、ゆっくりと立ち上がる。

「ルイも、バラが好きなのね」
「ということは、エマも?」

首を傾げたルイに頷いて、エマは綺麗になったカミーユのお墓を見つめたまま理由を口にした。
両親が亡くなったあと、自分の手元に残っていた家族のものがカミーユの写真しかなかったこと。その写真に、美しく綺麗なバラたちに囲まれて幸せそうに笑う、祖母カミーユが写っていた。たくさんあるにも関わらず、一本一本にとてもオーラがあるバラに一目惚れして、バラの絵ばかりを描くようになったのだと伝えた。

その流れで、エマは自分がなぜこの場所に来たのかも話していた。
どうやって自分が育ってきたのか。家族はどんな人だったのか。自分自身に通じることを少しでも知りたくて、写真一枚を手がかりに旅をしていたのだと。

「それでここまで……本当に、頑張ったんだね。エマ」

ルイは目を細め、そっとエマの頭に触れた。いたわるように優しく撫でられた頭に、恥ずかしさよりも嬉しさの方が先にきて、エマは身をまかせる。

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